第26回 文化の違いに対応するには 外国人の方が家賃滞納者は少ない 音信不通は夜逃げ、それとも帰国?

(財)日本賃貸住宅管理協会が実施した「家主アンケート」によれば、外国人へ賃貸する場合の不安点として、家主の6割以上が「家賃滞納や無断帰国」を挙げている。一方、不動産管理会社や民間保証会社(連帯保証人に代わり家賃債務を保証する会社)では、「外国人の方が日本人より家賃滞納率は低い」と言うところが多い。仮に、「家賃滞納率が外国人の方が日本人より低い」としたなら、それにもかかわらず、家主の6割以上がそれを不安視するのはなぜなのだろうか。そして本当に外国人の方が日本人より滞納が少ないのであろうか。

「なんか変なんですよね」と言いながら、社員が首をひねっている。「なにが、どう変なの?」と尋ねると、「いや~、今まで1回も家賃を遅れたことのなかったジムさんが、今月まだなんですよね。しかも、何の連絡もないし電話も繋がらないんですよ」。

この社員は、今までの経験から、少し様子を見てから支払いの催促をしようと考えていたらしい。ところが、いきなり音信不通になってしまったため戸惑っているようだ。「日本人の場合は、徐々に遅れだすとか、それなりに前兆があり、しかもまったく連絡が取れなくなることは無かった」と言う。
実は、このジムさんは既に帰国していたのだった。突然、帰国が決まりあわただしく準備するなか、ついうっかり部屋の解約手続きを忘れてしまったらしい。でも「敷金が2ケ月入っているので家主さんに迷惑をかけることはないのだろう」と飛行機に乗り込んでしまった。

このような“ついうっかり”は、日本人にはほとんどあてはならない事例ではないだろうか。それは、外国人にとっては日本での住まいが、必ずしも長期滞在を目的とする“主たる住居”ではなく、ビジネスや勉学のための一時的な住まいであったりするからだ。また、外国人では“家賃の支払いが遅れたらすぐ部屋を追い出される”と思っている人が多く、日本人の場合のように“少々遅れてもすぐには追い出されない”と思っている人は少ない。これは外国人の「家賃を支払わない=解約」といった認識、意思表示に繋がっているのかもしれない。そのため、外国人の場合は、いままで賃料の滞りがない人で、突然遅れたりした場合は、「家賃滞納」=「チェックアウト・帰国」ということも念頭に入れたほうが良さそうだ。

やはり、家賃滞納は日本人より外国人の方が少ないのかもしれない。もしかしたら、家主の家賃滞納不安は外国人への対応の不安なのかもしれない。

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