住まいと安全・・その2
いま大地震がやってきたら、外国人は・・。
自然災害が続く中「もし、いま東京に大地震が起きたら、当社の外国人入居者は無事に避難できるのだろうか」との不安が頭をよぎった。ゲストハウス(寮形式の建物)に住む外国人は、管理人の誘導に従うか、または親しくしている日本人入居者の後をついて避難所に向かうだろう。だが、親しくしている日本人の隣人もいない一般アパートに住む外国人は、無事に避難所にたどり着けるだろうか。日本語がわかれば問題はないが、日本語が通じなければ、どこに逃げていいのか右往左往し、パニック状態に陥るだけだ。
阪神の大震災では多くの外国人が被害を受け、その中には家屋の倒壊などで住まいを無くし避難所生活を強いられた人も多くいた。この時、日本語がわからないために、必要な情報を得ることができなく、心細い思いをした人も多かったそうである。
最近、各所で多言語表記のサインを見かけるようになった。日韓ワールドカップがきっかけか、外国人旅行者用の交通機関や公的施設の看板サインの多言語表記がそれである。外国人旅行者にとっては便利になったと思う。その一方、在住外国人向けの方はどうだろう。避難所サインなどの看板は多言語になっているのだろうか。
阪神大震災後、日本語がわからない外国人被災者向けに、避難所への案内や対応窓口の連絡先などを多言語で放送を始めたボランティア団体が神戸にある。そこのスタッフが10年前、外国人住民の多い新宿区を訪れた。その時スタッフの「阪神で起きた災害を人ごとと思っていませんか。いま東京で大地震が起こっても、備えは十分なんですか」という言葉が耳から離れない。阪神大震災から11年、震災地の各自冶体やボランティア団体は外国人被災者向けに、救済方法や仕組みを構築し、また取り組みもしてきた。スタッフの発言はその貴重な活動や教訓を被災地以外でも活かしてもらいたい、とする思いからのものだったのだろう。
一昨年の新潟県中越地震では、避難所の入り口に多言語で場所などを示す5カ国から10カ国語からなる「多言語防災シート」が貼られた。これは神戸の震災の教訓を活かし、横浜の団体が作成したものである。外国人が被災したときのことを想定し、必要な情報や知恵などの提供は、不可欠と言えるだろう。そして、その情報を伝えるのは、外国人が賃貸居住者であれば建物管理の不動産業者が適任かもしれない。