和式トイレの顛末 日本人はやっぱり器用だった

日本人はやっぱり器用だった
                           トム

これは10年前日本を訪れたときの話しです。私は、ロンドンで知
り合った日本人女性ユキ子さんと婚約をしましたが、まだ彼女の両親
に何の報告もしていなかったため、結婚の了解を得るため、彼女と東
京の世田谷にある彼女の実家を訪ねたのでした。

 彼女の家は、旧家でとても古い感じの家で、日本語学校の本などに
よく出てくる家にそっくりでした。ある程度、学校と彼女から日本の
しきたりや習慣については、教えてもらっていたので、そんな大きな
勘違いは無かったのですが、一つだけありました。

 それはトイレの使い方でした。ここのトイレは床に置かれた平面的
な感じのもので、天井には何に使うのか木の箱が吊ってあり、そこか
ら鎖がぶら下っていました。イギリスの物とはぜんぜん違ったもので、
これは和式トイレなのだとユキ子さんは言っていました。

 木の箱について彼女に質問してみたら、これは水がためてあるシンク
で、流すときに引っ張る、と説明がありました。

 ここまではよかったのですが、便器に対しての私の構え方がチョッ
ト違っていたみたいで、私はイギリスでしていた格好で用を足してい
たのです。つまりドアの方を向いて(反対向き)していたわけで、そ
のとき感じたのが、「よく、あんなところに日本人は命中させるな!やっ
ぱり日本人は器用な国民なのだ」と。

 この逆スタイル(洋式スタイル)をずっとやり続け、いよいよイギリ
スに帰る時期がきて(来日してから約1年後)、思い切って彼女に尋ね
てみました。

 「ほんと日本人って器用だよね!」 そしたら、ユキ子さんが「何が?」
と聞くので、例の話しをしてみました。ユキ子さんの反応は私の予想と反
対で、私の顔を見て大笑いをしたのです。

 

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