警戒地域の牛たち

229日関東から東北にかけて大雪が降り積もった。めったに雪が降らない浜通りだが、この日はごらんの通りの雪。ふくしま国際メディア村では福島第一原発の警戒地域で牛の保護をしており、いわき本部長が毎日牛たちにエサをあげに行っている。この日も、雪の中、餌が来るのを待ちわびている牛たちの所に車を走らせた。
 検問を抜け警戒地区に入ると警察以外で人と出くわすことは全くない。避難しないで住み続けている人もいるが、7人程度である。家はあっても人気は全くない街である。しかし、そこにあの311日から1年間、何がどうなったか、わけもわからず、ただ彷徨っている動物たちがいる。
 この日、最初に見かけたのは誰もいない民家の前の牛。人が恋しくなったのだろうか、それとも食べる物を物色するためだろうか、庭をうろついていた。

 

36日、私も現地に同行し、牛に餌をやる作業の手伝いをした。私たちを待っていたのは、牛だけではなく、黒と白の2匹の犬。私達の車を見つけ、駆け寄るクロ(私が勝手に命名)。近くには来るが、一定の距離以上は近づこうとはしない。かなり警戒している。
検問所の前で買ったパンをあげたが、近くには寄ってこなかった。なんとか近くで、観察しようと「クロ、シロ」と、大声で呼んでみたが、ダメだった。パンを置いて、その場を離れると、ようやく近寄り、パンを貪りながら食べた。(写真の左奥は、保護された牛たち)

検問所の前で買ったパンをあげたが、近くには寄ってこなかった。なんとか近くで観察しようと「クロ、シロ」と大声で呼んでみたがダメだった。パンを置いて、その場を離れるとようやく近寄り、パンをむさぼりながら食べた。

(写真の左奥は、保護された牛たち)

餌の匂いを嗅ぎつけてきたのは、犬たちだけではなく野牛たちもそうだ。野牛といっても、ついこの間まで牛舎で飼われていた黒毛和牛たち。仲間によれば、黒毛に交じって乳牛のホルスタインもいたそうだ。

                       用意してきた餌を、この牛たちにも分け与えた。犬たちと同じで最初は警戒して近づこうとしなかった。しばらくすると空腹には勝てなかったのか、4頭とも近づいて食べ始めた。4種とも痩せていたが、かいわそうに子牛(写真左端)は特に痩ていた。

 警戒地域で保護している牛は約40頭。毎日、いわき市から1時間かけて餌を運んでいる。車が近づくと懐っこい顔をした牛たちが寄ってくる。そして野牛も犬たちも。 早く飼い主の所に戻してあげたい。

 

 

 

 

                                         (餌をあげている、いわき本部長)

 

 

文責:荻野政男

 

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