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第43回 もっと知りたい外国人事情
英会話教師の住宅事情
今は昔も住まいが最高の教室
イギリスから帰国した翌年の1978年に、山の手線目白駅と池袋駅のちょうど真ん中あたり、古びたビルの2階で「パットニー・ランゲージ・リンク」という語学教室を私は仲間と始めた。名前が悪かったのか、それとも経営者として未熟だったなのか、2年もしないでその教室は“パット”散ってしまった。その時、英語を担当してくれた先生でクリスさんというブロンズヘアーのイギリス人女性がいた。彼女はモデルが本業であったが、時間の合間を縫って手伝ってくれていた。
彼女はすでに日本で1年近く生活していて、その時は目白駅から5~7分ほどの住宅地にあった古い1軒屋の1室(4.5畳)を間借りしていた。トイレも風呂も台所も共同、その割に家賃は高く、話を聞いた私は思わず「その家賃だったら普通の風呂付アパートが借りられるよ。なぜ引っ越さないの?」と聞いてみた。
彼女は首を左右に大きく振り「No! だって、日本はアパートを借りるのが大変でしょう。保証人とか、礼金とかあって」「それに、私は日本語が話せないから1人で不動産屋に行けないわ。友達にお願いするのもいやだし」「その点ここは家賃だけでいいの。なんといっても英語が話せるのがいいかしら」と。彼女にとっては4.5畳という部屋の狭さも、設備が共同であることも問題では無かった。問題は言葉が通じないことや、部屋を借りるにあたっての煩雑さの方だった。
英会話教師が皆、クリスさんのような住居に住んでいたわけではない(今のようなゲストハウスはほとんど無かった)。当時の在日外国人の数は76万人と現在の200万人と比べはるかに少なく、しかも永住者を除けば新規入国者は20万人程度だったのではないだろうか。そのため外国人英会話教師は不足しており、給料は日本人より高めだった。求めるアパートの程度も日本人より上だったような気がする。
最近の彼らの住宅事情に変化はあるのだろうか。外国人教師の中には、27年前のクリスさんのように、目的や期間に応じて簡単に借りる住居形態(ゲストハウスなど)を選ぶ人や、初心者英語教師の中には日本人に馴れるため、日本人入居者と交流ができる住居形態を探す人などもあらわれだした。外国人が増えることで、住まい方にも色いろと多様性がでてきたのかもしれない。