韓国人の賃貸借事情 家賃の要らない“伝貰(チョンセ)”がなくなる?

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 韓国人の賃貸借事情
家賃の要らない“伝貰(チョンセ)”がなくなる?
  
「保証金は間違いなく返してもらえるんですよね。大家さんがそれを使い込んだりしていませんよね」と不安げに質問を投げかけてきたのは韓国人の安さんである。安さんは韓国料理のお店を新宿でやっていたが、帰国のため店を閉めることにした。その解約手続きに建物の管理会社を訪れたのだ。お店の保証金が多額(500万円)なので、安さんの心配する気持ちも分からないではないが、「大家さんが保証金を使い込んでいないでしょうね」との質問に、管理会社の担当者はビックリした。
それから数日後、また安さんがやって来て「自分の後釜で、店を借りる人を見つけましたよ」と、知り合いを連れて来た。お客様を紹介していただき大助かりではあったが、なぜ借り手である安さんがそこまでするのかが、不思議でならなかったという。実は、そこには韓国と日本の賃貸借の違いが潜んでいたのだ。
韓国の賃貸借には、契約時に不動産購入価格の7割程度の保証金を家主に預け入れ、その代わり月々の家賃が要らない“伝貰(チョンセ)”という賃貸借の制度がある。この制度が受け入れられている理由の一つに、韓国人の資産形成がほとんど不動産に依存していることが挙げられる。資産を増やすため、入居者からの“伝貰金”(保証金)を次の不動産取得の資金として利用しているのだ。また、かつては銀行金利も高かったため伝貰金の利息が家賃分にもなっていた。だが昨今の低金利では利息が賃料として見合うわけもなく、保証金も投資に利用しているため、入居者の解約時に保証金が返せないといったトラブルも発生しているらしい。安さんが自分で次のテナントを見つけて来たのは、このような事態を懸念してのことだったのだ。
韓国人・朝鮮人が多く住む阪神地区の賃貸借制度で、敷金が他の地域に比べ高額(物件により違いはあるが、賃料の7~10カ月分)であったり、“伝貰金の償却”と似た“敷き引き”(敷金の償却)という制度があるのは、偶然なのだろうか。
日本でも賃貸借制度の見直しが進んでいるが、韓国でも“伝貰”制度の見直しが検討されていると聞き、韓国人の知人に「伝貰の仕組みはなくなるの?」と聞いてみた。すると、「韓国人は家賃を払い続けることを“無駄、もったいない”と考える人が多いので、伝貰がなくなることは無いのでは…」という答だった。これも文化の違いだろうか。

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