「J&F(Japanese & Foreigner)ハウス」の取り組み その5 国籍や年齢を問わない多目的で多彩な住人たち

●国籍や年齢を問わない多目的で多彩な住人たち

 外国人向けの宿泊施設として始まった「外国人ハウス」「ゲストハウス」は、そのユニークさで外国人のみならず日本人の間でも口コミで噂が広がり、「おもしろそう、楽しそう」といった一般賃貸住宅にはない魅力で、独特の賃貸住宅「ゲストハウス」へと変貌してきている。
 
 このゲストハウスの住民とは、どんな人達だろうか。第1号として誕生した北区の「J&Fハウス」の例でみてみよう。ここは20人ほどの規模だが、外国人と日本人の比率はほぼ同数である。
 
 まず、日本人入居者には、スキューバダイビングの指導員をめざしている若者がいた。働きながらアメリカでの資格取得を夢見る彼にとって、英語のマスターは必須だ。しかし、そのために時間も費用も割くことのできない彼には、生活しながら英語が学べ、しかも海外生活の予行演習となるゲストハウスは願ってもない環境である。まさに駅前留学ならぬ「屋内留学」だ。一方、スローライフを満喫して海外から戻ったばかりの日本人女性もいる。いきなり日本の社会に戻る不安をやわらげ、カルチャーショックを解消することが狙いだという。
 
 外国人のほうはアメリカ人の大道芸人、ウクライナ人のウェブデザイナー、中国人の料理家、韓国人留学生など多彩だ。英語の講師はもちろん5か国語を話すフィリピン人の商社マンなどもいるので、語学学習にも事欠かない。夕方になると、昼間出かけていた入居者たちが戻ってきてリビングに集まり、自国の料理を作ったり、深夜までおしゃべりなどをして、情報交換をしている。
 
 また、日本のお正月にあたる中国の春節(旧正月)には、ワーホリ(ワーキングホリデー)の韓国人若者3人、IT関連のインド人、名うての中国人料理家、そして日本の若者がリビングに集合。お目当ては、料理家延さんが作ってくれる本場中国の春節スペシャル料理である。豚や牛などの煮込み、野菜炒め、合子(ホーズ)、餃子と多彩だ。お茶碗を箸でチンチン鳴らしながら、今か今かと料理を待つ。一つ屋根の下で中国の春節を祝うアジアの友。数年前の私には想像できなかった光景だ。
 
 そんなJ&Fハウスでの楽しい話を聞きつけた入居希望者が後を絶たない。ある日、70歳はこえているだろうご婦人が、「お部屋は空いてませんか」とハウスを訪ねて来られた。早合点した管理人が「お孫さんが入居を希望しているのですか」と尋ねると、「住みたいのは私ですよ。とても楽しそうですもの」とご婦人。空き室がなかったのでかなわなかったが、交流やふれあいを求める人には人種も年齢も関係ないということだろう。

(住宅No55号 3月号 「外国人居住の現状と課題」(社団法人日本住宅協会の機関誌)に掲載された記事です。)

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