インドネシアの賃貸借事情

インドネシアの賃貸借事情 
 
18,110の島、300の民族、583の言語。そこに暮らす人々の“住まい”とは~
 

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今年(2012年)の夏、インドネシア人留学生カリナさんがインターンシップとして我が社で10日間の研修を行った。短い期間であったが“日本のアパートと賃貸借”について、会社のスタッフに取材を行い、母国インドネシアと比較しながら『カリナが聞いた!見た!イチイ2012Interview report』と『インドネシアの不動産豆知識』を纏めた。そこから抜粋してインドネシアの賃貸住宅事情についてご紹介しよう。
 
まずはカリナさんの母国インドネシア共和国(通称インドネシア)だが、ご存知の通り無数の島から形成されており、なんと大小18,110の島々がある。列島は東西5,110mの長さで、世界一の面積を誇るロシア(東西距離1Km)の半分ある。ちなみに日本は6,852の島からなり列島(北海道~九州)の長さは3,000Kmだ。人口は23千万人(世界第4位)で人口の増加率は13.6%と高い。いまでも人口は増え続け、少子化に悩む日本とえらい違いだ。
 
インドネシアが興味深いのは、種族、言語、宗教が違う多様性に富む多民族国家ということ。大多数はインドネシア人の先祖にあたるマレー系だが他に約300の民族がいる。公用語はインドネシア語だが文法が違う言語が583以上あり人々はこれを話す。人口の75%程度がイスラム教で、他はキリスト教、ヒンドウ教などだ。文化面では1949年にオランダ(350年間統治)から独立するまで日本はじめ諸外国の影響をかなり受けている。
 
住宅だが賃貸住宅はさほど多くなく一軒家の所有が多い。住宅ローンも組め、価格も安いので所有しやすい環境にあるためだ。都市部に入ると賃貸住宅が目立ち、一軒家や日本のアパート風『コス』や『ルマぺタ』(ルマ=家、ペタ=帯状)と呼ばれる共同住宅がある。一般的な『コス』は台所やシャワーが共同で、部屋は家具付きの個室だが面積は6㎡程度と狭い。『ルマペタ』はファミリー用になり部屋も広く設備も充実している。友達同士でシェアして住む人も多く、地方からの学生や労働者とっては“孤独にならずしかも経済的な住まい”というわけだ。
 
外国人や富裕層のための豪華なタウンハウスやアパートメントも増えてきた。アパートメントは日本のような小規模のものではなく大きなものが目立つ。間取りも2L3LDKのファミリー向けで、しかも日本の同タイプに比べかなり広い。建物の床は大理石と豪華仕様で、プール、フィットネスジム、ショッピングモール、保育所まで備えたものまである。セキュリティも万全でエントランスには守衛や警備員が配置されている。
 
一方、タウンハウスは敷地内が塀で囲われセキュリティが充実したコミュニティ型レジデンスだ。アメリカにある地域と隔離され安全面を重視した『ゲーテッドコミュティ』(Gated community)といった感じだろうか。大都市には子供が外で遊べる広場が少ない。そのためか子供の遊び場があり、そして安全対策が整ったタウンハウスやアパートメントは人気だ。
 
ところで、インドネシアの賃貸事情で特筆すべきは“お手伝いさん”の存在だ。日本ではすっかり見かけなくなった“お手伝いさん”だが、インドネシアではアパートメントでも“お手伝いさん”を雇用する人が多い。ジャカルタなど大都市には仕事を求め、地方からの労働者が多く集まるが、特殊な技能や教育を受けてない者の仕事は限られ、低賃金でもメイドの成り手は多いという。また地方出身者にとって、住み込みで働けるのは住宅費が掛からないので魅力的だ。ちなみにメイドの賃金は週2日労働で月4,千円程度、住み込みで月15千円程度と安い。
 
18,110の島、300の民族、583の言語がある多民族・多文化国家のインドネシア。その人達の暮らしを支える“住まい”もまた多種多様で、“住まい方”を通して多文化共生社会が作られてもいるようだ。
 
 
 

                       文責   株式会社イチイ 荻野   

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