第6回 住人が作る共生社会 ハウスからホームへ

「グッドバイ」「元気でね」と、ハウスの住民がここから旅発つ仲間に声をかける。握手をする者、抱き合う者、それぞれに名残を惜しむ。昨夜の送別会を思い出したのだろうか、涙ぐむ者もいる。その中に40歳半ばの日本人男性の姿があった。

一人暮らしの生活に“寂しさ”“不安さ”“つまらなさ”を感じていた彼は、友達から紹介され、国や文化を超えいろいろな人達が住むという「ゲストハウス」に、新たな人との出会いやふれあいを求め、1ケ月前からここの住民となった。初めのころは年齢的なこともあり友達もなく、なかなかハウスに馴染めないでいた彼だが、今、若い子達と一緒にここから旅発つ仲間に、「また戻っておいで、いっしょに住もうよ」と大声で叫んでいる。

ゲストハウスを越す者からは「寂しくなったら、また戻ってきてもいいですか」。一方、入居を希望する者からは「覚えていますか。1年前に住んでいた○○です。また住みたいのですけど部屋は空いていますか」などといった電話が最近、管理人のところに多く入る。

日本人にも多く利用され始めた「ゲストハウス」、人はそこに何を求め何を期待してやって来るのか。一見、このような形態の住居には大学生などが多いように思われがちだが、実は住人の大半は20代半~30代半の社会人である。そして男女比はほぼ半々だ。

一人暮らし生活の長い、ある日本人女性は会社からだれも居ない真っ暗なアパートに帰るのがとにかく嫌だったと言う。今はハウスに帰ると、かならず「お帰りなさい」とだれかが声をかけてくれる。玄関やリビングでは皆の話し声や笑い声が聞こえ、“ほっと”すると言う。また、今までの1人さびしい夕食も、今は皆と一緒で楽しい。家族や会社の同僚などには話せない事でも、今は話せる仲間ができたからだ。

ある者はこの「ゲストハウス」に普通のアパートにはない“人との出会い”や“めぐり合い”といった“非日常さ”を感じてやって来る。またある者は、一緒に暮らすメリットを感じ、さらにある者は、共同生活で繰り広げられる“長屋の八っさん熊さん”のような“貸したり借りたり生活”を楽しむ。

住民の多くが「このハウスの人はみんな友達で、家族みたいだよ。だからここはハウスではなくホームなのだ」と話す。

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る