「2人で入れるアパートはありませんか?」と不動産屋を訪れた2人連れ。店主がこの2人の顔をじろりと一瞥、そして「男の友達同士? ダメダメ!騒いでうるさいし、他の人にも迷惑かけるから。それにすぐ喧嘩してどちらかいなくなるんじゃないの?」と強烈な返事。生活費を節約するために「そうだシェアという方法があった!」と部屋を探し始めた2人だが、思うようにはいかなかったようだ。“経済的メリットがあり、1人暮らしよりも楽しくてしかも安全”、との理由でシェア(仲間との共同生活)を考える人が最近あらわれだした。だが、家主、不動産屋側の反応は鈍く、“兄弟姉妹もしくは恋人同士”ならともかく、赤の他人同士のグループに貸すことに対してはまだ懐疑的である。
「シェア」とは英語のshare(分担、共同)であるが、アメリカでは「ルームシェアまたはハウスシェア」、イギリスでは「フラットシェア」と呼ばれ、一軒家またはアパートを数人で借りる居住スタイルである。契約自体は借り主が貸し主と個々に締結するが、賃料は何人で住んでも同じであるため、ルームメイトが少なくなるとその分各自の負担が多くなる。そのためか、快適に住むためのルール決めなども自分達で行い、トラブルを防ぎ退去者が出ないよう皆が協力する。また、ルームメイトの欠員がでると自分達でその募集を新聞やホームページに出すのだ。つまりハウスの運営に関しては借り主達の自己責任というわけだ。そういえば30年前にイギリスで部屋探しをした時、学校の掲示板や雑誌にルームメイト募集がたくさんあったのも、これが理由だったのかも知れない。
日本でも、「ルームシェア」という新しい居住スタイルが浸透しそうである。原因の一つにインターネットの普及があり、「シェアメイト募集! 部屋の条件は○○○。タバコを吸わない、バレエに興味にある方を希望」、といったホームページの掲示板等への書き込みがそうである。インターネットによりユーザー同士が仲介者を通すことなく、ルームメイト募集ができるためだ。私も学生時代に自称ジャズピアニストのアメリカ人と、新宿にあったワンルームで3ケ月ほどルームシェアをした経験がある。自分と違った文化を持つ人間と生活することはとても良い経験になったと思う。少子化で他人との関わりが少なくなった世代にとっては、良い経験の場かもしれない。