ひとつ屋根の下で外国人と日本人が暮らす「J&Fハウス」の試み

東京ワセダロータリークラブ(例会)にて「ひとつ屋根の下で外国人と日本人が暮らす「J&Fハウス」の試み」というテーマでお話しをさせていただきました。

当社では「J&F(Japanese & Foreigner)ハウス」という新たな事業展開をはじめました。これはいわば“国際版コミュニティハウス”、リビング、キッチン、シャワールームを共用する短期滞在型賃貸住宅です。

閑古鳥の老朽アパートが、一転して超人気商品に

イチイ産業という不動産会社で外国人へのアパートあっせんに取り組んできた、仲介だけではなく、もっと積極的に外国人が住めるアパートを提供しようと思いたち、「J&Fハウス」という新商品を企画した。

現在運営しているのは、

・新宿3丁目の繁華街の一角、

・東武東上線の志木、

・中央線の立川、

・蒲田

・松戸

・そして先週オープンしたのが、虎ノ門

・来月には新築のゲストハウスが久が原でオープン

で供給されている。いずれも新築ではなく、古い設備共同の木賃アパートや開店休業状態だった簡易ビジネスホテルなどをリニューアルした物件である。借り手や宿泊客がいなくなり営業不振に陥っていた物件が、外国人向けの滞在型住宅として衣替えしたとたんに、引く手あまたの人気商品に生まれ変わったのだから、これはスゴイ! 「J&Fハウス」の特徴は、各室には専用設備はなく、代わりに共用のリビング・キッチンやトイレ、シャワールーム、コインランドリーがあるという点だ。この共用スペースが、入居者どうしのコミュニケーションの場として重要な意味を持つ。だから設備共同のアパートや、玄関ひとつで共同風呂の簡易ビジネスホテルは、むしろうってつけの物件だったといえる。

 

 

◆リビングでは深夜まで楽しいおしゃべりが続く

 

「J&Fハウス」に入居するのに、礼金や更新料は必要ない。入居時の保証金2万円と賃料のみでOK。滞在は原則として2週間以上で、ハウスの家賃は5.5万円(1ヶ月、水光熱費込み)、新宿のハウスは7.5万円(1ヶ月、水光熱費込み、個室に冷蔵庫・TV・エアコン付き)。個室の広さは4畳半~6畳くらいだが、部屋には布団もあるので家具を買いそろえる必要はない。共用リビングには、TV・大型冷蔵庫・電子レンジ・調理器具・食器類が備わっているので、食事は自分で作って食べることになる。夕方になると、昼間は出かけていた入居者たちが戻ってきてリビングに集まり、各国の料理をつくったり、深夜までおしゃべりをしたり情報交換をしたり、なんだかとても楽しそう。この住宅にはホテルのようなルームサービスはないが、住み込みの管理人がいて、共用部分の清掃や全体のマネージメントもちゃんとやってくれる。

 

 

◆国籍も職業も多彩な入居者たち

 

さて、この「J&Fハウス」の住民たちはどんな人たちだろうか? 荻野さんいわく「予想外だったのは日本人の若者、特に20代後半の女性の入居希望者が多かったこと! 外国人と日常的に接しながら英語を学びたいということで、反響の6,7割が日本人でした。」という訳で、「J&Fハウス」には外国人と日本人が、ほぼ半数ずつ住んでいる。外国人の方はというと、十条の方はアメリカ人の大道芸人、ホームページのデザインをしているウクライナ人など多彩だ。一方新宿の方は、家賃が少し高いこともあり、英語の先生などビジネス中心の人が多いという。5ヶ国語を話すフィリピン人の商社マンも住んでいるらしい。学生は少なく、年齢的には20代~40代の仕事を持っている外国人が中心という。

 

 

◆交流やふれあいを求めている若者たちもいる

 

「J&Fハウス」の共通語は英語。入居者の国籍は問わないが英語を話せることが前提条件となる。日本人は国内留学的な発想で、英語をマスターするまでここで暮らすという長期滞在者が多い。実は、住み込みの管理人も一風変わった人が志願してくるという。例えば十条の管理人は、スキューバーダイビングの先生を目指してオーストラリアに行くにあたり、もっと英語を勉強したいと思って応募してきたそうだ。荻野さんによると、英語が勉強できるうえに部屋代はタダ、経営までは無理でもマネージメントをしてみたい‥‥管理報酬は安くてもやりたいという奇特な人は結構いるらしい。「住宅を提供する側は、どんどん設備を専用化して、きれいで設備が良くてオートロックがあり、床がフローリングといった物件こそユーザーに求めれていると考えてきました。しかしプライバシーを守ってあげると助け合い、挨拶をする必要性もなくなってしまいます。今の若い人たちの中にも、お互いにふれあえる場所を求めている人もいるのではないか、日本人にも異なるニーズがいろいろあるということに今回あらためて気づきました。」という荻野さんの話が印象的だった。(文責:稲葉佳子)

 

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