日本語の「いいですよ」はYes or No?
イギリスにいたとき、下宿屋のイギリス人に日本語を教えたことがあったが、外国人に日本語を教えるのは非常に難しい事だとそのとき感じた。なにが一番難しいと感じたかというと、日本語を文法的に教えることだ。なにしろ私の日頃の会話といったら、文法など無視、動詞の四段活用など過去の記憶にあるだけで、動詞の変化など意識したこともなかったし、主語なし会話もあたりまえだった。それを理論的に説明するなど、とてもできるわけがない。
幸い日本語ダメ人間は私だけではなかった。下宿屋の日本人が集まると「あれ、あるでしょう」「あ~、あれね」「そうそう、わかる?」「こんな会話、英語じゃできないよね。外国人は理解できないだろうね」と妙に“あーうん”の日本語会話術に話が咲いていた。
この主語なし会話には日本語に精通した外国人でも苦戦するらしい。外国人だけでなく、日本人の同時通訳者もこれに苦しめられているという。今度は日本でのこと。アメリカ人のマイクさんがアパート探しに不動産屋に行ったそうだ。気に入った物件があり、さっそく申し込むことにした。申し込み手続きが終わり、不動産屋の店主からただ一言「いいですよ」と言われた。マイクさんはこれを「良い=Good 」の意味と勘違いし、引越しの準備をすすめてしまった。後日「いつ引っ越しできるのか」と、その不動産屋に電話した。ところが「まだ大家さんの了解が取れていません」との返事。驚いた彼はその話を日本人の友達に話してみた。が、「不動産屋の『いいですよ』の意味は、手続きが終わったので『帰っていいですよ』だったんだよ」と友達。日本語は主語なしで会話されることが多く、外国人にとってはこれを理解するのは至難の技だろう。それこそ日本の文化を理解しないと難しいのかもしれない。
盛んに日本の国際化が叫ばれ、国際共通語である英語の教育は、今では小学校からなされるようになってきた。実際、多くの外国人が来日し生活もしている。であれば、生活の基盤をなす住宅、その窓口である我々不動産業者もホテルのフロントとまでとはいかないまでも、片言の英語で日本語に悪戦苦闘する外国人に対応してみてはどうだろう。