第11回 国際化社会での対応(その1) 80年代 東京賃貸借事情

増加の一途をたどる在住外国人の数。2003年末の外国人登録者数は191万人と80年(外国人が増えはじめた)の78万人から113万人もその数を増やし、98年から03年までの5年間は年平均8万人増え合計で40万人増えている。

外国人が増えはじめた80年代“外国人向け賃貸”というと、当時は外資系商社・金融関係向けの高級マンションがイメージされた。そのような高級マンションを求めていた外国人はごく一部であり、大半は日本人と変わらぬ普通の住居を求めていた。当時、英会話学校、日本語学校と提携していた当社も、ごく普通の賃貸物件を先生、生徒に斡旋していた業者であった。

80年、英字新聞に「東京での部屋探しをお手伝いします。賃料1ケ月15,000円から」こんな3行広告を出してみた。当時はまだこの手の安アパートが結構あった。広告を見た外国人客からの電話が殺到。それもそのはず、外国人向け他社の広告は“ゼロ”が2つも多く、賃料1ケ月100万円以上のものばかりで普通の外国人客には無縁のものだったからだ。広告のおかげで、多くの英会話教師、留学生、就学生、そして客員教授として招聘された海外の大学教授などに部屋を決めてもらった。

ある時、国立(くにたち)の大学に赴任するパキスタン人教授の部屋探しをした。朝から、地元の不動産会社を20件ほど回り「日本で招聘し、滞在費用も保証されている大学教授である」と説明しても、外国人であることを理由に入居を断られた。夕方近くに、これが最後と飛び込んだ会社で、積極的に対応してくれる女性社長に助けられ部屋を決めることができた。大学教授といえども、外国人にとって東京での部屋探しは大変であった。

まだ、80年代は外国人もそう多くなく、高額賃貸などを除いて一般賃貸では外国人入居に慣れている貸主、不動産業者は少なかった。貸主は経験がないことの不安さで、積極的に入居対応ができず、業者も具体的な受け入れ方法や問題発生時の解決方法が分らなかったため対応が消極的であった。皆が経験不足、そして情報不足であった。

在住外国人の数が200万人に近づこうとしている。状況は改善されたのだろうか。前回まで、外国人からも“わかりやすい賃貸借”として支持される“ゲストハウス”を取り上げてきたが、外国人の多くは一般の賃貸物件を利用している。急ぐべきは一般の賃貸物件における外国人対応のようである。

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