日本の和室(畳の部屋)に興味を抱き、住んでみたいと思っている外国人は多い。ただそのために予想外の費用がかかってしまうとなれば、話は別であろう。
「なぜ、畳マットは黄色くなるとダメなのですか。まだ1年も住んでないから傷も汚れもありません。それに畳マットは、最初は青かったけどすぐ黄色くなりましたよ、それは私のせいではないでしょう」と、帰国を前に敷金の返還を迫る外国人入居者がいる。
そうかと思えば、引越し時に問題なく敷金を返してもらえるようにと、畳の上に新聞紙を敷き詰め、サンダル履きで部屋を汚さないように細心の注意を払いながら生活をする、カラチから来た社会学の教授などもいた。ただ、本人曰く「歩くたびにガサガサと新聞紙の音はするし、フトンを敷く時なども紙があちこちに飛んでしまって厄介で、とても快適とは言えなかった」と。日本と物価のまったく違う国パキスタン(日本の1/10~1/15)から来ている彼にとって、たかが畳代であってもそれは大金であったのだ。ただ残念なことに、彼の努力も虚しくその畳はすぐに黄色く変色してしまった。
ところで、諸外国における敷金の有無や取り扱いはどのようになっているのだろうか。敷金そのものはおおむねどの国にも存在し(家賃の0.5ケ月~3ケ月程度)、その考え方、取り扱いに関して大差はなく、また原状回復義務についても“故意、過失に伴う破損、汚損等に対して賠償責任が有り、それを敷金で精算する”としている。しかし、前述の“畳問題”のように、やはりその国独特の問題は存在する。特に日本においては原状回復の工事程度と範囲が諸外国に比べ多く、そのため貸主・借主両者の費用負担が多くなっている。他の国では改装をペンキ塗装とクリーニングだけで済ましてしまうところもあり、その場合の借主負担はゼロである。
敷金精算の改善案として “入替度に施すクロス、カーペットではなく、内装材の開発や、リフォームの有無を次の入居者が選択できる方法”などを挙げている「日本の住宅賃貸借契約システムの改善に関する提案」(まち居住研究会著)の例もあるように、グローバル時代のいま、誰もが納得できる、わかりやすい仕組みが望まれる。
いずれにしろ、海外における「日本の賃貸事情紹介」で“床には新聞を敷いてその上をサンダルで歩き回るのが敷金トラブルを回避する方法”などと紹介されないことを望む。