労務対策マニュアル(厚労省)4-2

3労務対策マニュアル(厚労省)4-2

厚生労働省新型コロナウイルスに関する Q&A(企業の方向け) 令和2年4月6日時点版(転記)

自主的に保育所への登園を自粛した場合の育児休業の延長

問 14 保育所に子どもを入所させる予定だった労働者が、市区町村等からの登園自粛の要請は受けていないものの、感染防止のために自主的に子どもを保育所に預けないこととしました。 こうした場合、育児休業の延長を認めなければならないでしょうか。

子どもが1歳までの場合

現在育児休業中の労働者から申出があった場合、事由を問わず育児休業の終了予定日の繰下げ変更(最長1歳まで(※1))を認める必要があります(※2、3)。

なお、繰下げ変更後の休業期間についても育児休業給付金は支払われます。

また、育児休業から一度復帰している方から再度の休業の申出があった場合には、再度の休業を認める必要はありませんが、各企業において独自に再度の休業を認めることは差し支えありません。

なお、こうした法を上回る対応により認められた休業期間については、育児休業給付金は支払われないためご留意ください。

(※1)両親がともに育児休業をする場合、一定の要件を満たせば最長1歳2か月まで(パパ・ママ育休プラス)

(※2)1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業それぞれについても同様に繰り下げ変更を認める必要。

(※3)繰下げ変更の申出は1か月前となっているが、申出が直前になった場合でも、繰下げ変更を認めることは可能。

子どもが1歳又は1歳6か月になるときの場合

子どもが1歳又は1歳6か月になるときに、引き続き育児休業をしたい旨労働者から申出があった場合、申出を認める必要はありませんが、各企業において独自に休業を認めることは差し支えありません。

なお、こうした法を上回る対応により認められた休業期間については、育児休業給付金は支払われないためご留意ください。

このほか、労使の話し合いにより、例えば子どもが2歳以上の場合などについても独自に休業を認めることは差し支えありません。

なお、こうした法を上回る対応により認められた休業期間については、育児休業給付金は支払われないためご留意ください。

労働者の雇用が継続されるよう、柔軟なご対応をお願い致します。

(参考)育児・介護休業法に基づく育児休業の要件

○育児休業をすることができるのは、原則として子が1歳に達する日までです。

○子が1歳に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳に達する日の翌日から1歳6か月に達する日までの期間について、育児休業をすることができます。

1.子が1歳に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合
2.保育所に入所できない等、1歳を超えても休業が特に必要と認められる場合

○さらに、子が1歳6か月に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1 歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日まで育児休業をすることができます。

1.子が1歳6か月に達する日において、労働者又は配偶者が育児休業をしている場合
2.保育所に入所できない等、1 歳6か月を超えても休業が特に必要と認められる場合

5 労働時間(変形労働時間制、36 協定の特別条項など)

変形労働時間制の導入や変更

問1 新型コロナウイルス感染症の対策のため、イベントの中止や学校の休業、事業活動の閉鎖や縮小などの影響を受けて、労働時間が減少してしまうことや、休む従業員が増えたときに残りの従業員が多く働かないとならない事態 が考えられます。その人達について、労働基準法の労働時間の上限を超えない ようにするため、変形労働時間制を導入したり、変更したりするにはどうしたらよいでしょうか。

労働基準法第 32 条の4においては、労使協定において、1年以内の変形期間を平均して1週間あたりの労働時間が 40 時間を超えない範囲内で、1週に1回の休日が確保される等の条件を満たした上で、労働日及び労働時間を具体的に特定した場合、特定の週 及び日に1日8時間・1週 40 時間の法定労働時間を超えて労働させることができるとされています。

今般の新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、事業活動を縮小したために労働時間が短くなる場合については、1年単位の変形労働時間制を導入することが考えられます。

また、今回の新型コロナウイルス感染症対策により、1年単位の変形労働時間制を既に採用している事業場において、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが困難となる場合も想定されます。

1年単位の変形労働時間制は、対象期間中の業務の繁閑に計画的に対応するために対象期間を単位として適用されるものであるので、労使の合意によって対象期間の途中でその適用を中止することはできないと解されています。

しかしながら、今回の新型コロナウイルス感染症への対策による影響にかんがみれば、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に労使でよく話し合った上で、1年単位の変形労働 時間制の労使協定について、労使で合意解約をしたり、あるいは協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能と考えられます。

ただし、この場合であっても、解約までの期間を平均し、1週40時間を超えて労働させた時間について割増賃金を支払うなど協定の解約が労働者にとって不利になることのないよう留意が必要です。

36 協定の特別条項

問2 36 協定においては、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合 (特別条項)には、限度時間(月 45 時間・年 360 時間)を超えることができるとされていますが、新型コロナウイルス感染症関連で、休む従業員が増えたときに残りの従業員が多く働くこととなった場合には、特別条項の対象となるのでしょうか。

告示においては、特別条項の運用について、「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」、「業務 上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないことに留意しなければならない。」としているところです。

一方で、今般のコロナウイルス感染症の状況については、36 協定の締結当時には想定し得ないものであると考えられるため、例えば、36 協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に、繁忙の理由がコロナウイルス感染症とするものであることが、明記されていなくとも、一般的には、特別条項の理由として認められるものです。

なお、現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続を踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付きの 36 協定を締結することが可能です。

労働基準法第 33 条の適用

問3 新型コロナウイルスの感染の防止や感染者の看護等のために労働者が働 く場合、労働基準法第 33 条第1項の「災害その他避けることができない事由 によって、臨時の必要がある場合」に該当するでしょうか。

ご質問については、新型コロナウイルスに関連した感染症への対策状況、当該労働の緊急性・必要性などを勘案して個別具体的に判断することになりますが、今回の新型コロナウイルスが指定感染症に定められており、一般に急病への対応は、人命・公益の保護 の観点から急務と考えられるので、労働基準法第 33 条第1項の要件に該当し得るものと考えられます。

また、例えば、新型コロナウイルスの感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液、治療に必要な医薬品等を緊急に増産する業務についても、原則として同項の要件に該当するものと考えられます。

ただし、労働基準法第 33 条第1項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものですので、 過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月 45 時間以内にするなどしていただくことが重要です。

また、やむを得ず月に 80 時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師による面接指導などを実施し、適切な事後措置を講じる必要があります。

(参考)時間外・休日労働とは?
労働基準法第 32 条においては、1日8時間、1週 40 時間の法定労働時間が定められており、これを超えて労働させる場合や、労働基準法第 35 条により毎週少なくとも1 日又は4週間を通じ4日以上与えることとされている休日に労働させる場合は、労使協 定(いわゆる 36 協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ていただくことが必要です。

しかし、災害その他避けることのできない事由により臨時に時間外・休日労働をさせる 必要がある場合においても、例外なく、36 協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではないことから、そのような場合には、36 協定によるほか、労働基準法第 33 条 第1項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。

労働基準法第 33 条第1項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用すべきものです。 なお、労働基準法第 33 条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

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