労務対策マニュアル(厚労省)4-1

労務対策マニュアル(厚労省)4-1

厚生労働省新型コロナウイルスに関する Q&A(企業の方向け) 令和2年4月6日時点版(転記)

労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)

休業させる場合の留意点

問1 新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなこ とに気をつければよいのでしょうか。

新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。

なお、賃金の支払いの必要性の有無などについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案するべきですが、労働基準法第 26 条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の 100 分の 60 以上)を支払わなければならないとされています。

また、労働基準法においては、平均賃金の 100 分の 60 までを支払うことが義務付けられていますが、労働者がより安心して休暇を取得できる体制を整えていただくためには、就業規則等により各企業において、100 分の 60 を超えて(例えば 100 分の 100)を支払うことを定めていただくことが望ましいものです。

この場合、支給要件に合致すれば、雇用調整助成金の支給対象になります。

※不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、1その原因が事業の外部より発生した事故であること、2事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。

感染した方を休業させる場合

問2 労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合、休業手当 はどのようにすべきですか。

新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。

なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近 12 カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。

具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。

感染が疑われる方を休業させる場合

問3 新型コロナウイルスへの感染が疑われる方について、休業手当の支払いは必要ですか。

感染が疑われる方への対応は「熱や咳があります。どうしたらよいでしょうか?」をご覧ください。

これに基づき、「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

発熱などがある方の自主休業

問4 労働者が発熱などの症状があるため自主的に休んでいます。休業手当の支払いは必要ですか。

会社を休んでいただくよう呼びかけをさせていただいているところですが、新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休まれる場合は、通常の病欠と同様に取り扱っていただき、病気休暇制度を活用することなどが考えられます。

一方、例えば発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

事業の休止に伴う休業

問5 新型コロナウイルス感染症によって、事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業とする場合等にどのようなことに心がければよいのでしょうか。

今回の新型コロナウイルス感染症により、事業の休止などを余儀なくされた場合において、労働者を休業させるときには、労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが大切です。

また、労働基準法第 26 条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の 100 分の 60 以上)を支払わなければならないとされています。

休業手当の支払いについて、不可抗力(緊急事態宣言における東 京都の要請)による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。

具体的には、例えば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可 能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に 勘案し、判断する必要があると考えられます。

休業手当の支払いが不要な場合の賃金

問6 新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させ、休業手当の支払いが不要である場合について、労働者に対する賃金の支払いは不要でしょうか。

そもそも、事業主は、その雇用する労働者のうち、特に配慮を必要とする方について、その事情を考慮して対策を行う等して労働条件の改善に努めなければならないものであり、これは新型コロナウイルス感染症に関連して労働者に休んでいただく場合も同様です。

そのため、新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させ、労働基準法の休業 手当の支払いが不要である場合についても、労使の話し合いのうえ、就業規則等により 休業させたことに対する手当を支払うことを定めていただくことが望ましいものです。

なお、このような労使の話し合いによって、事業場で有給の特別休暇制度を設ける場合の手続については、問9「特別休暇の導入の手続」をご覧ください。

また、一般的には、現状において、新型コロナウイルス感染症の拡大防止が強く求められる中で、事業主が自主的に休業し、労働者を休業させる場合については、経済上の理由により事業の縮小を余儀なくされたものとして、雇用調整助成金の助成対象となり得ます。

年次有給休暇と病気休暇の取り扱い

問7 新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に 年次有給休暇を取得したこととする取り扱いは、労働基準法上問題はありませんか。病気休暇を取得したこととする場合はどのようになりますか。

年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません。

事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則などの規定に照らし適切に取り扱ってください。

なお、使用者は、労働者が年次有給休暇を取得したことを理由として、賃金の減額その 他不利益な取扱いをしないようにしなければならないことにご留意ください。

パートタイム労働者等への適用について

問8 パートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者などの方についても、休業手当の支払いや年次有給休暇の付与等は必要でしょうか。

労働基準法上の労働者であれば、パートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者など、多様な働き方で働く方も含めて、休業手当の支払いや年次有給休暇付与が必要となっております。

労使で十分に話し合い、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。

なお、法定外の休暇制度や手当を設ける場合、非正規雇用であることのみを理由に、一律に対象から除外することは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正されたパートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の規定(※)に違反する可能性があります。

※大企業と派遣会社は令和2年4月、中小企業は令和3年4月からの施行となっています。

特別休暇の導入の手続

問9 新型コロナウイルスに関連して、労働者が安心して休めるよう、有給の特別休暇制度を設けたいと考えています。制度を設けるに当たっての具体的な手続はどのようになりますか。

労使の話し合いによって、事業場で有給の特別休暇制度を設けることができます。

その場合には、労働者が安心して休めるよう、就業規則に定めるなどにより、労働者に周知していただくことが重要です。

就業規則の定め方など、導入に当たっての具体的なご相談は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)の「働き方・休み方改善コンサルタント」が受け付けております。

都道府県労働局雇用環境・均等部(室) また、今般の新型コロナウイルス感染症対策として、新たに特別休暇の規定を整備した 中小企業事業主を支援するため、既に令和元年度の受付を終了していた時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)について、新たに特例的なコースを設け、3月9日 (月)より申請の受付を開始しました。

小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援

問 10 新型コロナウイルス感染症で小学校、特別支援学校等の臨時休業に際して、会社にお勤めの方が子どもの世話をするために休暇を取得する場合、どのような支援があるのでしょうか。

臨時休業した小学校や特別支援学校、幼稚園、保育所、認定こども園などに通う子どもを世話するために、2/27~3/31 の間に従業員(正規・非正規を問わず)に有給の休暇(法定の年次有給休暇を除く)を取得させた会社に対し、休暇中に支払った賃金全額 (1日 8,330 円が上限)を助成します。

外国人の労働者に対する労働基準法の適用

問 11 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、年次有給休暇など)は、外国人を雇用している場合でも適用されますか。

労働基準法の適用があるか否かに、外国人であるかは関係ありません。

外国人の方であっても、労働基準法の労働者に当たる場合は、一定の要件を満たす場合には、労働基準法における休業手当の支払いを行っていただくとともに、労働者が年次有給休暇を請求した場合においては、原則として、労働者が請求する時季に与えなければならないものです。

なお、使用者においては、労働者が年次有給休暇を取得したことを理由として、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないことにご留意ください。

外国人労働者に対する適用

問 12 問 10 の小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援は、外国人を雇用する事業主にも対象になりますか。

事業主に雇用される労働者であれば外国人についても適用されます。

保育所への登園自粛を要請された場合の育児休業の延長

問 13 保育所に子どもを入所させる予定だった労働者が、市区町村等から当該 保育所への登園自粛の要請を受けたため、当面子どもを保育所に預けないこととなりました。こうした場合、育児休業の延長を認めなければならないでしょうか。

<子どもが1歳までの場合>
現在育児休業中の労働者から申出があった場合、事由を問わず育児休業の終了予定日の 繰下げ変更(最長1歳まで(※1))を認める必要があります(※2、3)。

なお、繰下げ変更後の休業期間についても育児休業給付金は支払われます

また、育児休業から一度復帰している方から再度の休業の申出があった場合も、休業 (最長1歳まで(※1))を認める必要があります。なお、再度の休業期間についても育児休業給付金は支払われます。

(※1)両親がともに育児休業をする場合、一定の要件を満たせば最長1歳2か月まで(パパ・ママ育休プラス)

(※2)1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業それぞれについても同様に繰り下げ変更を認める必要。

(※3)繰下げ変更の申出は1か月前となっているが、申出が直前になった場合でも、繰下げ変更を認めることは可能。

<子どもが1歳又は1歳6か月になるときの場合>
子どもが1歳又は1歳6か月になるときに、引き続き育児休業をしたい旨労働者から申出があった場合、育児休業(1歳からの休業は最長1歳6か月まで又は1歳6か月からの休業は最長2歳まで)を認める必要があります。

なお、引き続き休業した期間につい ても育児休業給付金は支払われます。

このほか、労使の話し合いにより、例えば子どもが2歳以上の場合などについても独自に休業を認めることは差し支えありません。

なお、こうした法を上回る対応により認められた休業期間については、育児休業給付金は支払われないためご留意ください。

労働者の雇用が継続されるよう、柔軟なご対応をお願い致します。

(参考)育児・介護休業法に基づく育児休業の要件

○育児休業をすることができるのは、原則として子が1歳に達する日までです。

○子が1歳に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳に達する日の 翌日から1歳6か月に達する日までの期間について、育児休業をすることができます。

1.子が1歳に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合
2.保育所に入所できない等、1歳を超えても休業が特に必要と認められる場合

○さらに、子が1歳6か月に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1 歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日まで育児休業をすることができます。

1.子が1歳6か月に達する日において、労働者又は配偶者が育児休業をしている場合
2.保育所に入所できない等、1歳6か月を超えても休業が特に必要と認められる場合

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