住まいと安全・・その1
「地球が動く!」外国人の地震対応は-
それから2カ月くらいしたある夜、「ぐらぐら」「ゆらゆら」、そして木が擦れるような「ギシギシ・・」といった音。びっくりした金さんは、フトンから飛び起き寝巻き姿のまま外に飛び出した。外に出てまたビックリ。金さん以外に誰もいなく、いつまでたってもアパートからは誰も出てこない、そればかりか部屋の灯りもつかない。何事もなかったかのようにアパートはひっそりとしていた。金さんはわけもわからず部屋に戻った。
翌朝、金さんは隣の日本人に「なぜみんな逃げなかったのですか」と昨夜のことを尋ねてみた。「いつものことだし、昨日の震度3程度じゃ誰も大騒ぎもしないし、逃げたりしないわよ」と、隣の女性は平然としている。けれども、生まれて初めて地震を経験した金さんにとっては、「地球が動く、この世の終わりだ~」と思ったほど無気味なものだった。建物が木造で古かったことがさらに恐怖を増幅させたのかもしれない(中国には木造住宅が無いので地震で軋むギシギシといった音も、金さんにとっては初めての不気味な経験だった)。
1月17日、あの日がまたやって来る。今年で阪神大震災があってから11年目になる。突然襲った大地震で多くの犠牲者が出たが、その中には多くの外国人も含まれていた。当時、兵庫県には104カ国、約10万人の外国人が住み、その7割が被害が大きかった阪神地区に集中していた。また、多くの留学生が被害に遭い、住まいを失った。経済的に余裕のない留学生はどんな住居に住んでいたのであろうか。金さんと同じで地震の経験も知識もないために、賃料の安さだけで住居を選び、建物の安全性などを考慮に入れなかった人も多かったのではないだろうか。来日間もない外国人に対しては、安全性も含めて日本の住文化を伝える必要があるだろう。これも一つの異文化共生かもしれない。